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コラム

2023.08.04

2023年7月に閣議決定した「GX推進戦略」とは?簡単に解説します!

目次
1.背景
2.エネルギー安定供給を前提としたGXに向けた脱炭素の取組
3.「成長志向型カーボンプライシング構想」等の実現・実行
4.中小企業のGX

2023年7月28日に閣議決定が行われ、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が定められました。本コラムでは、GX推進戦略が決定された背景とその中に記載されている主な取り組みと中小企業のGXに関係の深いポイントについて解説します。

1.背景

2023年現在、世界では、カーボンニュートラルを宣言する国・地域が増加(GDPベースで9割以上)し、排出削減と経済成長をともに実現するGXに向けた長期的かつ大規模な投資競争が激化しています。また、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、我が国のエネルギー安全保障上の課題を再認識せざるを得ない状況となっているためGX推進戦略が制定されました。

2.主な取組(1)エネルギー安定供給を前提としたGXに向けた脱炭素の取組

政府は、エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取り組みを進めようとしています。以下では、その具体的な取り組みについて紹介します。

①徹底した省エネの推進
  • •複数年の投資計画に対応できる省エネ補助金を創設などの中小企業の省エネ支援を強化。
  • •関係省庁が連携し、省エネ効果の高い断熱窓への改修など、住宅省エネ化への支援の強化。
  • 改正省エネ法に基づき、主要5業種(鉄鋼業・化学工業・セメント製造業・製紙業・自動車製造業)に対して、政府が非化石エネルギー転換の目安を示し、更なる省エネを推進。
②再エネの主力電源化

•2030年度の再エネ比率36~38%に向け、今後10年間程度で過去10年の8倍以上の規模で電力ネットワークの整備を加速し、特に2030年度を目指して北海道からの海底直流送電を整備する。これらの投資に必要な資金の調達環境を整備。
•洋上風力の導入拡大に向け、「日本版セントラル方式」を確立するとともに、新たな公募ルールによる公募を実施。
•地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化。次世代太陽電池(ペロブスカイト)浮体式洋上風力の社会実装化。

③原子力の活用

厳格な安全審査を前提に、「40年+延長20年」と運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う。

3.主な取組(2)投資支援、新たな金融手法を含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実行

GX経済移行債活用した先行投資支援

GX経済移行債とは、今後10年間で150兆円を超えるGX投資を官民協調で実現していくために発行される債券のことです。政府は、GX経済移行債を創設し、今後10年間に20兆円規模の先行投資支援を実施することを考えています。民間のみでは投資判断が真に困難な案件で、産業競争力強化・経済成長と排出削減の両立に貢献する分野への投資等を対象としおり、規制・制度措置と一体的に講じていく予定です。

②成長志向型カーボンプライシングによるGX投資促進

•成長志向型カーボンプライシングにより炭素排出に値付けし、GX関連製品・事業の付加価値を向上させる。
•成長志向型カーボンプライシングを、直ちに導入するのでなく、GXに取り組む期間を設けた後で、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で導入(低い負担から導入し、徐々に引上げ)する方針をあらかじめ示す。これにより、支援措置と合わせて、GXに取り組む事業者に取り組む動機を与える仕組みを作る。

③新たな金融手法の活用

•GX投資の加速に向け、「GX推進機構」が、GX技術を社会で実用化させるまでのリスクを担えるよう補完策(債務保証等)を検討・実施。
トランジション・ファイナンスに対する国際的な理解醸成へ向けた取組の強化に加え、気候変動情報の開示も含めた、サステナブルファイナンス推進のための環境整備を図る。

4.中小企業のGX

政府は、日本のカーボンニュートラル実現には、大企業だけでなく、中小企業も含めた社会全体でのGXの取組必要であると考えています。具体的な中小企業等のGXの取組は、自社の排出量等を把握する、排出量等を削減する、などのサプライチェーンにおける脱炭素化の推進が重要です。加えて、中小企業等の取組をサポートする支援体制の強化、サプライチェーンで連携した取組支援の強化、グリーン製品市場の創出などを推進していく必要があります。以下では、上記の課題を解決するための政府の今後の対応について説明します。

①政府、独立行政法人による支援

中小機構によるオンライン相談窓口設置や、脱炭素取組事例集の作成。国の電子報告システムの改修等による排出量等の見える化支援、省エネ・省CO2を促進する設備投資支援による排出量の削減支援を推進していきます。また、グリーンに資する革新的な製品の開発やグリーン分野への展開も支援します。

②支援機関の人材育成、支援体制の強化

中小企業支援機関や金融機関向けの講習会の実施や脱炭素に関する資格の認定制度を創設などにより、支援機関等の人材育成を支援します。加えて、支援機関に対してカーボンニュートラル関連施策の情報提供等を行い、支援機関の体制強化を進めていきます。

③取引先・サプライチェーンでの脱炭素取組推進

下請中小企業振興法15の「振興基準」に下請事業者の脱炭素化に係る取組を追加したことや、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大を進め、中小企業も含めたサプライチェーン全体での脱炭素化の取組を促進します。

④スタートアップによるGXイノベーション促進

2022年11月に取りまとめられた「スタートアップ育成5か年計画」に掲げられた目標も踏まえ、GX関連分野におけるスタートアップ企業の研究開発・社会実装支援等を抜本的に強化します。

まとめ

今回のコラムでは、GX推進戦略について簡単に解説しました。今回説明したように、日本の政府は、中堅・中小企業を取り残すことなく脱炭素化・GXを推進する方向性を明確に打ち出しています。このような時代の変化は、企業にとって、支援制度の活用も含めビジネスチャンスが生まれる可能性も大きいです。この脱炭素化の変化に迅速に対応することで、競争優位性を獲得しましょう

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