2050年カーボンニュートラル達成を目指す中、多くの企業が環境に配慮した取り組みを実施しています。近年では、自社だけでなくサプライチェーン全体でのCO2排出量削減を行う企業が増え、多くの企業がグリーン調達の実施を公表しています。今回は、環境活動における取引先との関係や、実際に取引先から調査があった企業の例を紹介します。
企業の脱炭素化は以前から進められてきましたが、近年は取引先にも環境対応を求める動きが強まっています。
2022年に株式会社東京商工リサーチが行った全国の中小企業向け調査では、取引先から温室効果ガスの把握やカーボンニュートラルへの協力を求められた企業の割合が、2020年の7.7%から2022年には15.4%へと倍増しました。これは、多くの企業がサプライチェーン全体で脱炭素に取り組み始めていることを示しています。
参考:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000357.pdf
サプライチェーン全体でCO2削減に取り組むことには、以下のようなメリットがあります。
大企業をはじめ、取引先の環境対応を重視する企業が増えています。対応が不十分な場合、取引停止や新規受注の機会を失うリスクが高まります。
環境対応を進めることで、「持続可能な企業」としての評価が高まり、新たな取引機会の創出につながります。
参考:コラム「エシカル消費について解説します!」 https://www.co2-hikaku.com/column/1828/
このように、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指す企業の中には、「グリーン調達」を行うことを公表し、環境への取り組みを取引先の選定基準のうちの一つとしている企業もあります。
「グリーン調達」とは、環境に配慮した原材料や部品を優先的に調達する取り組みです。企業は独自の調達基準を設け、取引先にも環境対応を求めることで、サプライチェーン全体の脱炭素化を進めます。
・CO2排出量の報告
・CO2削減目標の設定
・環境認証(ISO14001やSBT等)の取得
・環境関連法規制の順守
・カーボンフットプリントの算出
また、取引先や取引製品について、品質、価格、納期、サービスに加えて「環境配慮」という観点から評価を行い、ランクの高い調達先を優先するとしています。ランクの低い新規の調達先とは取引をしないと明記している企業もあり、環境に配慮した経営を行っていないと取引先の確保が難しい時代になってきました。
もしも取引先がこのようなグリーン調達を公表した場合、自分の会社は環境に配慮していると取引先へアピールすることはできるでしょうか。適切に報告できる自信がないと感じたのであれば、以下のコラムを参考にCO2排出量削減対策を始めていきましょう。
参考:コラム「取引先を失う可能性も!?今すぐ脱炭素経営を目指すべき理由」
https://www.co2-hikaku.com/column/1850/
すでに、多くの中小製造業のもとに、取引先からグリーン調達に関する調査が届いています。ここでは、私たちが支援した企業の事例を紹介します。
兵庫県姫路市の精密金属加工業者であるA社は社外へのPRになればという気持ちで、昨年中小企業版SBTを取得しました。中小企業版SBTは、現状のCO2排出量から目標とする年までに○%削減するという目標を設定し、国際機関にて承認を受けることで取得できる国際認証のことです。
この中小企業版SBTを取得してから約半年後の令和6年11月頃、A社の元に取引先である東証プライムに上場の機械メーカーから環境への取り組みに関する調査が届きました。この調査は、「CO2排出量の削減目標を設定しているか」「SBTを取得しているか」といった内容で構成されていたため、既にSBTを取得しているA社はSBT取得済みの旨と設定した目標を報告することができました。取引先の企業が策定している環境計画内のスコープ3(サプライチェーンからの排出量)の削減に向けた取り組みとしてこのような調査が届いたと見られます。A社の方はこんなに早く取引先に報告することになるとは思っていなかったとのことだったので、このコラムを読んでいる皆さんの元にもこうした環境活動に関する調査が来る日は遠くないかもしれません。
環境に配慮した製品や企業を選択する消費傾向が加速する中で、サプライチェーンでのCO2排出量を削減して企業価値の向上につなげようと、国内外の大企業を始めとした多くの企業がグリーン調達に取り組んでいます。実際に中小製造業の元へ環境に関する取引先調査が届いており、その内容を参考に取引先が選定されています。取引先調査での環境活動の報告が直接的な評価につながっていく可能性が高いため、CO2排出量の可視化や削減目標設定等、今からできることに取り組んでいきましょう。
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