年々、脱炭素への様々な取り組みが政府から大企業へ、さらには大企業を支える中小企業へと拡大しています。その要因としては、国際的な認証規格「SBT」(Science Based Targets)の認証件数増大が挙げられます。2024年11月末時点で、日本国内のSBT認定取得企業数は1,480社を超えました。また、2020年に導入された「中小企業版SBT」では、2023年11月時点で552社だった認定企業数が、わずか1年で1,135社へと大幅に増えています。この急増の背景としては、大企業がサプライチェーン全体に脱炭素への取り組みを推奨していることがあり、脱炭素への取り組みが「選択肢」ではなく「経営の必須条件」へと変わりつつあることが影響していると考えられます。
こうした中で、SBT申請要件が2024年11月に改定されました。本記事では、SBT認定制度の概要から、改定された申請要件のポイントを解説し、採るべき対応策をご提案します。
SBT(Science-Based Targets)は、企業が国際的な温室効果ガス削減目標を設定し、それが科学的根拠に基づいていることを認定する制度です。特に「中小企業版SBT」は、申請要件が中小企業向けに設定されているので、中小製造業の方々においては、ぜひご確認いただきたい脱炭素認証規格です。
・脱炭素への取り組みを明確に示し、投資家や取引先からの信頼を獲得
・市場競争力の向上とブランド価値の向上
・脱炭素経営を通じた持続可能な成長基盤の構築
※SBT認定制度概要については過去コラムで掲載しています。
(https://www.co2-hikaku.com/column/1672/)
2024年11月に行われた改定での主な変更点は、以下の3点です。
オンライン検証ポータルを通じた申請が必須となり、アカウント作成と中小企業要件の事前承認が必要となりました。
従来の2030年固定から、申請年から5~10年先の範囲で任意の年を選択することが可能になりました。
例①:2024年申請の場合、2029~2034年の間で選択
例②:2025年申請の場合、2030~2035年の間で選択
基準年の選択肢が2018~2023年から2015~2023年に拡大されました。
さらに、目標年の柔軟化に伴い、目標削減率についても、従来の固定された基準に縛られることなく、下表に示す最低限の目標を満たしたうえで、企業の状況に応じた削減率を設定できるようになりました。
今回の改訂では、中小企業がより柔軟に目標を設定できるようになりました。一方で、この変更によって認定取得までに従来よりも時間を要するようになりました。これらへの対応策を以下にまとめます。
アカウント登録と事前承認の手続きが追加されたことにより、SBT認証の取得期間が従来の1~2ヶ月から3ヶ月以上に延びると予想されます。このため、アカウント登録を行い、必要なデータ整備や目標設定を早期に開始することが必要です。
目標年(申請年から5~10年先)と削減率の改定により、自社の事業計画に合致した現実的な削減目標を設定することが可能となっています。基準年の設定においては、省エネ設備を導入した前年に設定することなど、目標年を見越した、削減目標を達成し易くなる基準年にすることを推奨します。
オンライン検証ポータルの導入により申請が複雑化しました。これに対しては、専門コンサルタントの活用や社内の体制整備が重要です。外部支援を活用することで、効率的な申請プロセスを構築しましょう。
SBT認定制度の改定により、中小製造業にとって柔軟な脱炭素への取り組みが可能となる一方で、複雑化した申請プロセスへの対応が必要となっています。こうしたことがSBT認証取得への足枷となっている面がありますが、弊社をはじめとした外部支援を活用すれば中小製造業の方々の負担を大幅に軽減できると考えています。脱炭素への取り組みを「やらなくてはならない義務」ではなく、「競争力を高める戦略」と捉え、SBT認定取得を第一歩として脱炭素経営を推進し、時代の潮流にぜひ乗っていただければ幸いです。この変化を成長のチャンスとして活用する行動が、継続的な取引や新規取引に繋がるきっかけになると確信しています。
複雑なCO2排出量の計算を、
簡易的に行う診断ツールです。
詳細なモニタリング診断も行う
サービスも用意しています。
面倒な入力なしで最短30秒!
詳細を送ってCO2排出量を可視化