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コラム

2024.09.26

自民党総裁候補者の河野氏、小泉氏が触れた炭素税について、わかりやすく解説します。

はじめに

2024年9月27日(金)に投開票される自民党総裁選に先立ち、候補者たちによる討論会が開かれました。その中で、河野太郎デジタル大臣と小泉進次郎元環境大臣が炭素税(正式名称:炭素に対する賦課金)に言及されました。
過去にも「炭素税って何?簡単に解説!」のコラムを掲載しましたが、改めて炭素税の概要と、両氏が炭素税の導入を提言した理由をわかりやすく説明します。
「炭素税って何?簡単に解説!」:https://www.co2-hikaku.com/column/1049/

 

1.炭素税とは?

炭素税とは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量に応じて課される税金です。簡単に言えば、「CO2を出せば出すほど、たくさん税金を払う」ということです。この税金の主な目的は、①企業や個人にCO2排出削減の行動を促すこと、②政府が環境対策の資金を確保することです。
炭素税は、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の輸入事業者などから徴収することが検討されています。中小製造業のみなさまにおいては、使用する燃料や電力の料金に含まれる形で間接的に負担することになるでしょう。

 

2.なぜ炭素税の導入を提言されたのか?

さて、討論会の中で、小泉進次郎元環境大臣は「国民の税負担のあり方」について、次の発言をされました。
「上げる税は何かって言うと、私河野さんが言った炭素税。これっていうのはまだ日本の中であんまり認知はないんですけど、なんで必要かっていうと、もしもこの炭素税を導入しなかったら結局のところこれからヨーロッパと貿易をするときにヨーロッパで税金を取られることになっちゃう。なので、これしっかりあの様々な制度の工夫は必要なんですけど、あの強かにこの炭素税を仕込んでヨーロッパに払わなきゃいけないという税ではなく、国内でちゃんと還流をするというそういう形の税をしっかり仕込むことが私は大事なことだと思っています」(発言のまま)
ソース:https://www.youtube.com/watch?v=MszGGhsyICk
57:01~57:40 炭素税について

これは、2026年にヨーロッパで導入が予定されている国境炭素税(正式名称:欧州CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism))のことを考えての発言だと推測します。国境炭素税とは、脱炭素規制が緩い国の企業からの輸入品にたいして、税関で課す炭素税のことです。
例えば、ヨーロッパ諸国の炭素税はCO2排出量1トンあたり1万円、日本の炭素税はゼロとします。ヨーロッパ諸国の企業と日本の企業が同性能の自動車を製造し、その製造仮定でCO2を100トン排出、自動車の販売価格は300万円と仮定します。
ヨーロッパ諸国の企業は、炭素税100万円が徴収されるため、自動車の販売価格に100万円を上乗せして販売します。一方で、日本の企業は炭素税がかからないため、そのまま販売します。これでは、ヨーロッパ諸国の企業は炭素税が負担となり、競争上不利になってしまいます。

【脱炭素規制が厳しい国の企業は、炭素税のコスト増により競争上不利になる】

 

そこで、ヨーロッパ諸国は国境炭素税を導入し、日本からの輸入品にたいして税関で国境炭素税を徴収します。これにより、競争条件を均等化し、炭素効率の低い輸入品に脅かされて国内生産が減少することを防ぎます。
一方で、日本の企業はヨーロッパ諸国に製品を輸出するたびに、国境炭素税を支払うことになります。つまり、日本のお金がヨーロッパ諸国に流れてしまうのです。

【脱炭素規制が厳しい国は、競争条件を均等化させるため、国境炭素税を導入する】

 

日本のお金を流出させないためには、日本でもヨーロッパ諸国と同じくらいの炭素税を導入する必要があります。そうすれば、日本の企業は日本政府に炭素税を支払うことになり、ヨーロッパ諸国に国境炭素税を支払う必要がなくなります。
日本政府が徴収した炭素税は、日本国内の企業が環境対策をするための補助金や、新しい技術を開発するための投資に使えます。これが、日本の国益につながるのです。

【脱炭素規制の緩い国は、国内でお金が還流するように炭素税をかける】

河野氏と小泉氏が炭素税の導入を提言したのは、このような日本の利益を考えてのことだと推測されます。

 

まとめ

炭素税の導入は、中小製造業の皆さまにとって大きな負担になる可能性が高いです。しかし、これを単なるコスト増と捉えるのではなく、取引先にたいしてCO2排出量の情報提供や削減提案など、新しい事業機会と捉えることが大切です。今から準備を始め、この変化に柔軟に対応できる体制を整えていきましょう。

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