温暖化対策への関心は年々高まってきており、エコバッグを持ち歩いたり電気自動車に乗り換えたりと、身近なところから環境への取り組みを始めている方が増えてきています。ところで、皆さんは日頃購入している商品について、作られてから廃棄されるまでにどのくらいCO2を排出しているのか考えたことはあるでしょうか。CO2排出削減の効果が期待されるCFPについて、コラムを複数回に分けて詳しく解説していきます。第1弾となる今回は、CFPの制度ができた背景やメリット等に焦点を当ててご紹介します。
出典:https://www.cfp-japan.jp/about/
CFPはCarbon Footprint of Productsの略称で、カーボンフットプリントと読みます。商品やサービスのライフサイクル全体(原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまで)を通して排出される温室効果ガスの総量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです。CO2排出量を「見える化」することで、消費者はより低炭素な商品を選べるようになり、企業は更にCO2排出量の削減へ取り組んでいくようになります。
現在、地球温暖化の主な原因であるCO2の排出量を減らすことが強く求められています。しかし、多くの人が環境にたいする問題意識を持ちながらも、実際に具体的な行動を起こしている人は決して多くありません。CO2は目に見えず、環境にどれほどの悪影響を与えているのかもわからないので、自分ごととして捉えるのが非常に難しいのです。そこで、個人が排出しているCO2量を可視化し、CO2排出量削減の動きを促すCFP制度が考案されました。
日本では、2008年に経済産業省が「カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会」を設置し、CFP制度が本格的に始動しました。この取り組みは、ヨーロッパを中心に世界中で広がっており、ラベルを表示した製品が市場に流通している国も存在します。ラベルのデザインは国によって異なり、CO2排出量だけでなく、環境への影響を7段階でレベル分けした表やリサイクル率を表示する国もあります。
出典:https://www.cfp-japan.jp/ministry/index2009.html
CO2排出量の表示は、環境に配慮した取り組みを行っている企業の証となり、イメージアップにつながります。また、消費者にたいして環境に配慮した商品と伝えることで、商品や企業が選ばれるきっかけになります。その他、環境に配慮している企業への投資であるESG投資が注目されており、投資家へのアピールにもなります。
原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまで、それぞれの段階におけるCO2排出量を算出することから、どの段階でCO2を多く排出しているかを把握できます。これに基づき、最も多く排出している段階から具体的な対策を検討し実行することで、効率的に排出量の削減が可能になります。
上場企業においては、環境に配慮した事業を行っていることを確認するため、CO2排出量の開示が求められています。これには、自社のCO2排出量だけでなく、仕入や輸送等、事業に関わっている他社の排出量の把握も必要になります。こうした取引先からのCO2排出量のデータ提出要求に対応することで、新たな取引の開始や、信頼関係の構築に繋がります。
CFPの計算には、原材料の調達から、製造、流通、使用・維持管理、廃棄まで各段階で排出量を特定する作業が必要です。関連データの収集から集計まで作業量が膨大で時間もかかるため、時間に余裕のない企業にとっては、大きな負担となる可能性があります。
CFPの導入と維持には専門知識が必要で、外部委託に委託する場合や、社内での人材育成を行う場合には、それなりのコストが伴います。特に中小企業にとっては、このような負担が大きなデメリットとなることがあります。
「脱炭素経営 入門」の出版にあたり、CO2排出量を算定し裏表紙に表示しました。このCO2排出量はカーボンクレジットを通じて相殺しており、その旨も併記しています。CFP表示がされた商品はまだまだ少ないですが、今後このような取り組みを実施する企業が増えることにより、CFP表示商品が増加し、消費者の意識改革へとつながっていくことが期待されます。
CFPは、日本ではまだ認知度が低いものの、2021年に東京証券取引所が上場企業の企業統治において参照すべき指針の一つとして、主要な約4000社の企業にCO2排出量の開示を求めています。その範囲は、自社で使用した燃料や電気に加え、原材料の調達、輸送、廃棄といった事業活動全体であり、傘下にいる中小企業も排出量の開示が必要となります。こうした流れを踏まえて、これからCFPに取り組んでいく中小企業も少しずつ増えていく見込みです。
CFPのコラムはシリーズ化し、より詳しい情報をご紹介しますのでお楽しみに!
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