目次
1.中小企業版SBTとは
2.2024年1月の制度変更内容
2.1対象となる中小企業の定義
2.2価格
2.3審査プロセス
中小企業においてもカーボンニュートラルやGXが重要視される中、脱炭素の国際認証である中小企業版SBTが果たす役割はますます重要となっています。そのような中、SBT事務局は2024年11月1日に中小企業版SBTの制度変更をアナウンスしました。本記事では今回の制度変更のポイントを解説します。
1.中小企業版SBTとは
SBT(Science Based Targets)は、企業が地球温暖化対策として設定する目標の一つであり、科学的に裏付けがある目標を達成することを目指しています。SBTはCDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)という4つの国際機関のパートナーシップにより運営されており、企業が自身の温室効果ガス(GHG)排出量を低減し、気候変動に対抗するために、科学的な手法を用いて設定される目標に対して認証を与える役割を持っています。
SBTの中で「中小企業版」は、規模が小さい企業や中小企業向けに適用される枠組みです。これは、大企業と同様に、科学的に根拠があり、達成可能かつ効果的な温室効果ガス削減目標を中小企業が設定して削減活動に取り組めるよう、より簡便な方法で申請、承認ができる枠を設けているものになります。
2.2024年1月の制度変更内容
SBT事務局は2023年11月1日に中小企業版SBTの制度変更に関するアナウンスを出しました。
詳細は以下の公式ページ(英文)に記載されています。
SBTi Announces Updated SME Definition and Fees
https://sciencebasedtargets.org/news/sbti-announces-updated-sme-definition-and-fees
新しい制度は2024年1月1日に発効し、SBT認証を申請する全ての中小企業に適用されます。既に中小企業版SBT申請を行っている企業は、即座に行動を起こす必要はありません。2024年1月1日以降、SMEターゲット検証ルートを利用したい企業は、新しいSMEの定義に従う必要があります。また、2024年1月1日以降に目標を再計算または更新する中小企業が申請を行う際には変更が適用されます。
ここからは、具体的な変更点について解説します。
2.1(変更点①)対象となる中小企業の定義
中小企業の定義が、少し複雑になっています。
条件(1)企業が中小企業と見なされるには、以下の条件が全て該当する必要があります。
1.スコープ1およびロケーションベースのスコープ2の排出量が10,000tCO2e未満であること。
2.海運船舶を所有または管理していないこと。
3.再エネ以外の発電資産を所有または管理していないこと。
4.金融機関セクターまたは石油・ガスセクターに分類されていないこと。
5.親会社の子会社であり、その親会社の事業が標準的な検証ルートに該当しないこと。
条件(2)以下の条件のうち2つ以上に該当することも必要です:
1.従業員数が250人未満であること。
2.売上高が4,000万ユーロ未満であること。
3.総資産が2,000万ユーロ未満であること。
4.森林、土地および農業(FLAG)セクターに分類されていないこと。
※2024年3月現在、売上高は5000万ユーロ未満、総資産2500万ユーロ未満、この項目のうち3つ以上に該当するのが条件と変更されています。
これらの条件は、欧州連合(EU)のCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)の中小企業基準に準ずるように改定されたものです。
特に大きな変更ポイントは従業員数になります。今までの制度では「従業員数が500人未満であること」が必須要件であったため、今回の変更で売上高、もしくは総資産の要件がクリアできる企業であれば500人以上の企業でも申請ができるようになるため、中堅企業の皆さまは要件該当を再確認することが重要になります。
また、売上高、総資産要件が追加されたため、英文での財務諸表提出が必要となる場合があります。申請を検討されている方は用意することをお勧めします。
2.2(変更点②)価格
認証手数料について、中小企業向けの料金が1,000ドルから1,250ドルに引き上げられることが発表されました。この値上げは、持続的なインフレを考慮したものであり、中小企業パスウェイが開始されて以来、初めての調整となります。
また、発展途上国および経済移行国(国連経済社会局の定義に基づく)に拠点を置く、売上高が1,000万ドル未満の中小企業は、手数料免除の対象となるような変更も同時に行われます。日本の企業は当該定義には当てはまらないので皆さまは特に意識する必要はないです。
3.審査プロセス
中小企業版SBTの制度変更アナウンスには直接記載されていませんが、審査プロセスの中でデューデリジェンス(提出資料の精査)が強化されているようです。ここであらためて中小企業版SBTの申請ステップについて説明します。
ステップ1:中小企業ターゲット設定フォームの記入
申請フォームを使用して、情報を記入し、削減目標を選択し、基準関連の質問にすべて回答します。電子メールによる提出は受け付けていません。
オンライン申請は3つのパートに分かれています:
1.中小企業の一般情報
2.目標検証サービスの選択:サービスの選択、基準年の選択、温室効果ガスプロトコルに準拠した関連情報(活動および排出量)の提出
3.契約条件と支払いに関する情報
ステップ2:デューデリジェンスとターゲットの承認
すべての情報が完全かつ正確であることを確認するため、SBT事務局によるレビューが行われます。情報に不備や矛盾がある場合、全体のプロセスに遅れが生じる可能性があります。デューデリジェンスに合格した後、目標の承認を確認するためのメールが送信されます。
ステップ3:請求書発行と手数料の支払い
Terms & Conditions(利用規約)を締結し、SBT事務局から支払い詳細を中小企業に送付します。その後、SBTの支払い証明書をsmes@sciencebasedtargets.orgに提出します。
ステップ4:支払い確認と目標確認
SBT事務局は支払いの受領を確認します。その後、最終確認メールが中小企業に送信され、ターゲットの承認と登録が確認されます。このメールには、コミュニケーションパックとターゲット公表に関する関連詳細が含まれています。
ステップ5:請求書発行と手数料の支払い
この段階で、ターゲットはサイエンス・ベース・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)のウェブサイトおよびパートナーのWe Mean Businessのウェブサイトで公表されます。ウェブサイトは毎週木曜日に更新され、新しいターゲットが反映されます。
複雑なCO2排出量の計算を、
簡易的に行う診断ツールです。
詳細なモニタリング診断も行う
サービスも用意しています。
面倒な入力なしで最短30秒!
詳細を送ってCO2排出量を可視化