目次
1. 炭素税とは簡単に
2. 炭素税が必要な理由
3. 日本の炭素税に対する取り組み
4. 炭素税のメリットとデメリット
地球温暖化対策の取り組みの1つとして注目されているのが、炭素税です。1990年にフィンランドが導入したことを契機に、欧州でも導入する国が増え、二酸化炭素の排出量削減などに成功しています。
日本でも2021年頃から前向きな導入を検討する動きがみられ、近い将来、企業や個人に炭素税が課せられることになる可能性もあります。本記事では、炭素税について大まかに理解できるように、解説するので、今後の動向が気になる人は是非参考にしてください。
炭素税とは簡単に言うと、企業や個人などの炭素排出者に、排出した二酸化炭素量に応じた経済的負担を課す政策であり、カーボンプライシングの方法の1つです。カーボンプライシングとは、環境政策の一環として、炭素排出量の抑制を促すために炭素に価格を付ける手法を指します。
ちなみに、炭素税に近いカーボンプライシング手法としては、「排出量取引制度」があります。これは企業があらかじめ設定した排出枠内で二酸化炭素を排出する制度です。もし排出枠を超える場合、排出枠内に収まっている企業から余剰排出枠を購入するメカニズムを備えています。この制度もまだ日本では検討中であり、今後の展開に注目が集まっています。
炭素税が、地球温暖化対策の一環として必要な理由として、以下の2つが挙げられます。
地球温暖化は、氷の融解や極端な気象、海面上昇など、多くの深刻な問題を引き起こしています。主な原因は、産業活動やエネルギー生産に伴う温室効果ガスの排出です。これにより大気中の温室効果ガス濃度が増加し、地球の気温上昇が加速しています。このような背景から温室効果ガスの削減が急務となります。炭素税は、排出を減少させるための動機を提供することで、温室効果ガスの削減を促す役割を果たします。
炭素税の導入によって、新たな財政収入が国や地方自治体にもたらされます。この収入は、環境保護と持続可能な開発プロジェクトへの資金供給に重点が置かれています。具体的には、森林保護や海洋保全、生態系の回復と保護などの環境保護プロジェクトが支援されます。さらに、持続可能な開発への資金供給として、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率向上のプロジェクトが支援されます。炭素税収入を通じて、クリーンエネルギーの普及が進み、化石燃料に依存するエネルギーの転換が実現します。
このように、環境保護プロジェクトや、再生可能エネルギーの導入などを支援するための財源としても炭素税は必要なのです。
ここでは、日本これまでの炭素税に対する取り組みと、これからの炭素税に対する考えについて述べた後、実質的な炭素税と言われている炭素賦課金について解説します。
日本では、2012年10月から「地球温暖化対策のための税(以下「温対税」という)」が導入されました。温対税は、化石燃料の利用に伴う環境負荷に応じて課税され、税収は再生可能エネルギーや省エネの導入など次世代エネルギー分野の発展に役立てられます。 温対税は、ガソリン・灯油・天然ガス・石炭といった全ての化石燃料に対して課税を行う石油石炭税に対してさらに、CO2排出量1トン当たり289円上乗せして課税します。 しかし、日本の地球温暖化対策税は諸外国の炭素税と比べると、非常に低い水準です。
国名 | 導入年 | 2020年時点の税率(円/tCO2) | 税収規模(億円) |
日本(温帯税) | 2012 | 289 | 2600 |
フィンランド(炭素税) | 1990 | 7,640(暖房用) 8,170(輸送用) |
1624 |
スウェーデン(CO2税) | 1991 | 15,670(標準税率) 12,640(産業用) |
3214 |
カナダBC州(炭素税) | 2008 | 2,730 | 1092 |
フランス(炭素税) | 2014 | 4,020 | 4020 |
環境省の炭素税に関する資料から、日本は炭素税を他国の基準に近づける方針を示しています。ただし、急激な影響を避けるため、最初は低水準での課税を検討し、段階的に引き上げる方針を採用しています。これにより、大きな社会的変革を回避しつつ、企業が早期に脱炭素化に取り組むインセンティブを提供できると環境省は考えています。
環境省「炭素税について」
https://www.env.go.jp/council/06earth/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E7%A8%8E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf
成長志向型カーボンプライシング構想の一環として、「炭素賦課金」があります。この制度は、法律的な位置づけとして、租税ではありませんが、実質的には、炭素税に当たる制度です。温対税と同様に化石燃料の輸入事業者等は、排出分に応じた賦課金が課されます。この制度の目的としては、GX経済移行債の返済財源の確保や企業に脱炭素化のインセンティブを与えるという目的を持ち、炭素税と役割も似ています。しかし、大きく違う点が、炭素税は導入時期が明確に決まっていないのに対して、「炭素賦課金」は2028年に導入されることが決まっているという点です。環境省の方針としては、炭素税と同様に、低い税率から、徐々に引き上げていく方針を示しています。
環境問題への対策として注目される炭素税は、その導入によってどのようなメリットとデメリットが生じるのかを見てみましょう。
炭素税のメリット
炭素税は、温室効果ガスの排出を抑制するため、企業や個人に排出量に応じた課税を行います。これにより、二酸化炭素(CO2)などのガスの削減が奨励され、地球温暖化や気候変動への対策が進むことで環境への負荷が軽減されることが期待されます。
炭素税の導入は、消費者に省エネ製品の導入を奨励する刺激となり得ます。企業が環境負荷を低減することはもちろん重要ですが、温室効果ガスの排出を大幅に減少させるためには、国民個々人が行動と意識を変えていくことが必要です。こうした意識改革の一翼を担う方法として、炭素税は消費者に対しても有益な役割を果たすでしょう。
炭素税のデメリット
炭素税の導入には、鉄鋼業界や化学業界のように二酸化炭素の排出量が大きな産業に対して懸念があります。日本のようにエネルギー資源に制約のある国では、既にエネルギーコストが高く、炭素税の追加負担はさらなる経費増加を招く可能性があります。
このような状況下で炭素税が導入されれば、コストの上昇が避けられません。炭素税の導入により、日本の製造業界、特にものづくりを支える企業の成長にブレーキがかかる可能性が指摘されています。
炭素税を導入することにより所得格差が拡大する可能性があります。生活必需品への支出割合が多い低所得者層ほど、炭素税の負担は大きくなる傾向があります。消費税と同じように消費者全員に一定に課される炭素税は、所得の低い家庭や大家族などの家計を圧迫することが考えられるので、導入する際は、何かしらのフォローが必要でしょう。
炭素税は、地球環境保護と経済の持続可能性を両立させるための重要な手段です。排出削減を通じて温暖化の進行を抑え、地球環境を守る一助となることが期待されています。また、新たなクリーンテクノロジーの普及や経済の転換を通じて、より持続可能な未来を築くための一歩となるでしょう。しかし、経済的な側面を見るとデメリットとなりうる部分もあるので、経済と環境の両面を慎重に考慮しながら、炭素税の導入考えることが重要です
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